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離婚

離婚(りこん)とは、婚姻関係にある生存中の夫婦もしくは同性同士が、有効に成立した婚姻を、婚姻後に生じた事情を理由として将来に向かって解消することをいう。離婚制度は有効に成立した婚姻を事後的に解消するものである点で、婚姻成立の当初からその成立要件の点で疑義を生じている場合に問題となる婚姻の無効や婚姻の取消しとは区別される。

離婚に関する法制度は国によって差が大きく、離婚を認めないカトリック教徒が大多数を占めるマルタやフィリピンでは離婚が法的に許されていない(その場合でも婚姻の無効は認められる)。これに対して、台湾(中華民国)の民法1049条では、無条件で協議離婚を認めている。

裁判上の離婚の法制度としては、配偶者の一方に夫婦間の共同生活関係の継続を困難にさせるような有責行為がある場合に限ってその有責配偶者の相手方からの離婚請求のみを認める有責主義と、夫婦間の共同生活関係が客観的に破綻している場合には離婚を認めるという破綻主義がある。

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離婚の原因

司法統計によれば、離婚の申し立てにおいて、夫からの申し立て理由は「性格が合わない」、「異性関係」、「異常性格」の順で多い。また妻からの申し立て理由は、「性格が合わない」、「暴力をふるう」、「異性関係」の順で多い。

アメリカでは、政府や大学公開講座や宗教団体などが、健全な家庭生活を維持・増進させるための活動をしているが、そうした団体の一つであるThe National Marriage Project は、離婚の原因は「家庭の運営に必要な知識を持っていないこと」であるとして、必要な情報を提供している。また、Marriage Builders (ウィラード・ハーリ)は、「心からの合意の原則」など、考え方の食い違いを調整するための概念について解説している。また、Smart Marriage では、離婚の原因は「意見の食い違いを調整する技術を持たないこと」であるとして、その技術を習得するための教育を行い成果を挙げている。Marriage Saversも同様である。また、アメリカ合衆国政府は、米国厚生省の「健全な家庭生活への新しい方法」や、「国立健全な結婚情報センター」の結婚教育などにより、アサーティブネス、交渉、コミュニケーション能力、人間関係の教育などについて情報提供を行っている。

PREPという結婚教育プログラムは、カップルに効果的なコミュニケーションの仕方と、争いをコントロールする技術を教える。この結婚教育プログラムは、本またはビデオまたは講習という形で提供される。このプログラムを行ったカップルが、結婚後5年以内に離婚する割合は、半分に減る。PREPでは、「話す人−聞く人の技法」が行われる。

コミュニケーションの男女差

男性と女性では、コミュニケーション(会話)の目的や内容が異なっている。

男性は、階級のような序列の中にいる。男性が話す内容は、直接的で簡潔であり、最終的な結論を端的に述べたものである。男性は、問題解決を目的とした機能的な情報伝達を上から下へ行っている。

女性は等質な融和の集団の中にいる。女性が話す内容は、相互の協調を目的とした私的で感覚的な情報交換である。女性は、会話を通じて、相手と親密に喜怒哀楽を共有する。

争いは、男性にとっては、上下関係を決めるための手続きであるが、女性にとっては、関係の破綻を意味する。

コミュニケーションの男女差に対して、相手の方式を邪悪なものと決め付けたり、自分の方式をさらに強く押し付けたりすると、コミュニケーションの失 敗が拡大し、紛争はエスカレートして、苦痛が蓄積する。コミュニケーションの方式に違いがあることを理解して、自分の真意を正しく伝え、相手の真意を正し く理解することが必要である。

離婚研究の歴史

1960年代までは、離婚は特に避けるべきことであるとは考えられていなかった。独身時代に付き合う人を何人かかえてもそれが普通であるように、結 婚してから相手をかえるのも当然であると受け止められていた。しかし1970年代に入って、ウォーラースタインを始めとする研究により、離婚が子どもに悪 影響を与えることが知られるようになると、離婚を避けるための方策が模索された。1970年代のアメリカにおいて、大学に在籍し心理学的カウンセリングを 実地に行っていた研究者たちが、離婚しかけているカップルに対してカウンセリングを始めたのであるが、当時は事実上、誰も離婚を止めることはできなかった。こうして「なぜ人は離婚するのか。どうすれば離婚を防ぐことができるのか」というテーマで、研究が始められるようになった。

研究のスタイルは大きく分けて二つある。一つは離婚したカップルと離婚していないカップルを多数集めて、各集団の特質の差を比較する方法である。こ うした研究から離婚をきたしやすい特質が明らかにされた。10代での結婚、貧しいこと、十分な教育を受けていないこと、子どもができないこと、前の結婚か らの子どもがいること、再婚や再々婚であること、結婚前に同棲していたこと、信仰心が薄いこと、違う宗教を信じていること、都市に住んでいること、離婚し ている親に育てられたことなどである。

もう一つの方法は、離婚したカップルと離婚していないカップルに対して、質問や観察やテストを行い、なぜ離婚したのか、あるいはなぜ離婚しないのか を調べる方法である。離婚した後で調べる後ろ向き研究の他に、結婚して間もないカップルに対して観察を開始しその後の展開を調べる前向き研究も行われる。

こうした研究から分ったことは二点ある。第一の点は、離婚するカップルも仲の良いカップルも同じように争いを起こすのであるが、仲の良いカップルで はコミュニケーションを通じて相互に納得できる妥協点に到達するのに対して、離婚するカップルではそれができず、片方が一方的に決めるだけになる点であ る。不満と苦痛が蓄積して離婚に至る。 第二の点は、片方による結婚生活への関与が減少すると、コミュニケーションの絶対量が不足し、夫婦の人間関係が維持できなくなる点である。相手の意図が分 らないと、最悪の事態を想定して、関係が悪化することがある。情報の空白は、マイナスの印象や思考で埋められやすい。働きすぎの夫や、仕事と育児に時間と エネルギーをとられる妻などにおいて、夫婦同士の交流が充分に確保されなければ、夫婦の関係は消滅して行く。

対策として、会話の時間を充分に確保した上で、相手の必要を正しく理解し、自分の必要を正直に説明し、対等のパートナーとして、双方共に納得できる妥協点を探さなければならない。

離婚に関係する心理学理論 

離婚に関係する心理学理論には以下のようなものがある。

  • (社会的交換理論) 人は、他者との関係を維持する損得と、関係を断つ損得を比較評価して、その存廃を決めると考える。物質的損得だけでなく、精神的損得も評価される。この理論は、離婚に至るリスクを評価する際に役に立つ。
  • (進化心理学) 生物は、自分の遺伝子を子孫に増やすように行動すると主張する。子どもができないことによる離婚など、離婚についても遺伝子の繁栄の観点から説明する。
  • (離婚の過程モデル) 離婚は単一の出来事ではなく、一連の過程(プロセス)であると主張する。離婚には以下のような側面があり、それらは必ずし も同時には起こらないと述べる。(1)気持ちの共有がなくなること(精神的離婚)、(2)法的な離婚、(3)経済的に2世帯になること、(4)子育てを分 割すること、(5)地域社会において2世帯になること、(6)精神的に立ち直ること。
  • (家族システム論) 離婚について、夫と妻の関係が途絶することだけに注目するのではなく、家族構成員個々の関係の変化や、家族をとりまく人々との関係の変化にも注目する。
  • (辛抱強さ、レジリエンス) ささいな出来事でも簡単に心が折れる人がいる一方で、困難な状況にもじっと耐える人がいる。この辛抱強さの程度から離婚しやすさを説明する。また、離婚後のストレスに対しても、辛抱強い人とそうでない人がいると主張する。
  • (愛着理論)  乳幼児において観察された対人関係の類型は、成人においても存続すると主張する。大人の愛着パターンには、安心型(50〜60%の人)、不安-逃避型 (25〜30%の人)、不安-専心型(約15%の人)があり、このうち不安型の人は、離婚や再婚に至る可能性が高いと主張する。
  • (フェミニズム論) 離婚とは、家庭内で虐げられてきた女性達による、ある種の革命であると主張する。
  • (帰属理論) 家庭内の苦痛や不和を何のせいにするかということで、離婚を説明する。
  • (ストレス理論) ある人が、家庭内のストレスをどう認識し、それにどう対処するかということで、離婚を説明する。
  • (責任論) 夫婦関係の破綻は、有責者の落ち度によって生じると主張する。

離婚が子供に与える影響

かつて、離婚は子供に何の影響も与えないと考えられていた。アメリカの心理学者ジュディス・ウォーラースタインは、親が離婚した子供を長期に追跡調査して、子供達は大きな精神的な打撃を受けていることを見出した。子供達は、両方の親から見捨てられる不安を持ち、学業成績が悪く、成人してからの社会的地位も低く、自分の結婚も失敗に終わりやすいなどの影響があった。

また、バージニア大学のヘザーリントン教授は、実証的研究を行って次のように述べた。「両親がそろっている子どものうち、精神的に問題が無い子ども は90%であり、治療を要するような精神的なトラブルを抱えている子どもは10%であるのに対して、両親が離婚した子どもでは、それぞれ75%と25%で ある。」(1993年)。離婚が子どもに悪影響を及ぼすことについて、多くの国で大規模な追跡調査が行われ、悪影響が実際に存在することが確認された。棚瀬一代は、親の離婚で壊れる子どもたちについて報告した。

また各国で、子供から引き離された片親が片親引き離し症候群(PAS)にかかるとの報告も存在する。

ケンブリッジ大のラム教授は、離婚が子どもの成育にマイナスの影響を及ぼす要因として、次の5つを挙げている。(1)非同居親と子どもとの親子関係が薄れること、(2)子どもの経済状況が悪化すること、(3)母親の労働時間が増えること、(4)両親の間で争いが続くこと、(5)単独の養育にストレスがかかること。

子どもの健全な発育には、父親の果たす役割も大きい(父と子の関係)。

こうした事実を踏まえて、欧米各国では、1980年代から1990年代にかけて家族法の改正が行われ、子どもの利益が守られるようになっている。

子供が犯罪者になる、もしくは未婚の母になる確率

米国価値研究所Institute for American Valuesの調査結果による離婚と事実婚についての主な代償として(1)離婚や未婚、再婚した家族で育った娘が未婚の母になる率は3倍に達する。(2)親が離婚した子供は両親がそろった家庭に育った子供と比べて社会人になったとき、失業率や経済的な困窮が増加している。(3)母子または父子家庭で育った子供は、結婚している実の両親の家庭に育った子供に比べて2倍の確率で30代初めまでに実刑を受けているが挙げられる。またペンシルベニア州立大学ポール・アマトPaul Amato教 授によれば、安定的な結婚を1980年の水準まで上昇させれば、停学になる子供を50万人、非行・暴力行為に走る子供を20万人、喫煙する子供を25万 人、心理療法を受ける子供を25万人、自殺志向の子供を8万人、自殺未遂の子供を2万5千人、それぞれ減らせるとしている。

悪影響を少なくする対策

日本も批准した子どもの権利条約では、その対策として、(1)子供の処遇を決めるに際しては、年齢に応じて子供の意見を聞くこと、(2)別居が始まれば両親との接触を維持することを求めている。

離婚の悪影響を少なく抑えるための条件は、二人の親の間で争いが少なく、近くに住んで、再婚せず、二親とも育児に関わり、育児時間が50%ずつに近いことである。

  • メリーランド大学の Geoffery Greif 教授は、子どもと別居親との親子関係が切れる要因を研究し、別居親はなるべく子どもの近くに住むことを勧めている。また、離れて住む子どもに対し、行動を通じて愛情を充分に表現することを勧めている。
  • ケンブリッジ大学の Michael Lamb 教授は、別居親が子どもと単に遊ぶだけでは子どもの予後は改善されず、子どもに関与する中で父親としての役割を果たさなければならないと述べている。(父親の役割を参照)。
  • ゲルフ大学の Sarah Allen 博士は、多くの論文を検討した結果、子どもの発達を改善させるために別居の父親にできるのは次のことだと述べている。(1)充分な養育費を払うこと、 (2)同居の母親と協力的な関係を保つこと、(3)親として次のような役割を果たすこと。(規則を決めて子どもに行わせること。子どもを監督すること。子 どもの宿題を手伝うこと。アドバイスを与えること。精神的に支えること。子どもが成し遂げたことをほめることなど)。
  • エリザベス・セイアー博士は、父親と母親が争いを止めることを勧めて、次のように述べている。子どもは、身体的にも精神的にも、父親と母親から造 られたものである。もし父親と母親が争って相手を非難し糾弾するならば、それは子どもを非難し糾弾することである。子どもの心は、傷つき引き裂かれるであ ろう。子どもの利益を最優先して、きちんとコミュニケーションを行って、協力して子どもを育ててゆかねばならない。

2010年(平成22年)3月9日の衆議院法務委員会で、千葉景子法務大臣(当時)は、次のように述べた。「離婚したあとも、両親がともに子どもの親権を持つことを認める『共同親権』を民法の中で規定できないかどうか、政務3役で議論し、必要であれば法制審議会に諮問することも考えている」。

民主党や自民党などの超党派議員は、平成23年の通常国会に、離婚後の子どもとの面会を保証する法案を提出する準備をしている。

結婚から得られる利益の喪失

人は、結婚から大きな利益を得るが、離婚により、その利益は失われる。学歴や職歴がおなじであれば、結婚している男性は、独身や離婚後の男性よりも、平均して、より多くの収入を得る。結婚している男性は、より健康で、精神的に安定し、より長生きする。(例えば、40歳の時点で離婚している者は、結婚している者に比べて、男性で約10歳、女性で約5歳、寿命が短くなる)。 結婚している女性は、独身、同棲中、離婚した女性と比較して、経済的に、より豊かになる。ストレスが少なく、幸福感がより強くなる。また両親が結婚してい る子供は、片親や、親が再婚後の子供と比較して、学業成績がより良好で、精神的なトラブルが少なく、成人してからの社会的地位がより高く、結婚生活もうま く行く。子供は両方の親から多くを学ぶのである。また結婚した家庭は、地域における人間関係の拠点になり、社会のネットワークに貢献する。離婚により、こうした結婚の利点は失われる。

女性については、寡婦とそうでない女性を比べると、寡婦の方が貧困率が高いという。

「結婚は勢いでできるが、離婚には体力が必要」という言葉がある。この言葉について、作家の佐藤優は「結婚は相互信頼を前提とするものであるが、離婚は相互不信を前提とするため」という分析している。

離婚によって収入を得ている職業・産業

離婚によって収入を得ている職業としては、弁護士(法曹)、探偵などがあげられる。人によってはこのような職業・業務を「離婚関連産業」「離婚産業」などと呼んだりすることがあり、また、離婚関連のお金の動きを「市場」と見なし、「離婚関連市場」などと呼ぶ人もいる。 。

  • オーストリアでは2007年10月、探偵、弁護士、カウンセラーらによって「離婚フェア」が開催された。こういった職業では離婚を「今ある関係の終わり」ではなく、「新たな始まり」などと表現し、人を離婚へと誘導することがある。
  • 子どもの権利は、日本では裁判規範とはされず、裁判所によって無視されており、国際機関から再三勧告を受けている。
  • 欧米の家族法は、離婚に際して、子供と両方の親との親子関係を維持することに主眼があるが、日本の民法は、子供の奪い合いを招き、夫婦の対立を導いて、子供と片親との親子関係は、結局切れることが多い。
  • 民法の権威であった我妻栄教授は、自分の子供の離婚を止めることができずに、関係の政府委員を辞任した。

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